Nさんの作ったウエディングドレス
Nさんは、「ここへ来ると命の洗濯ができるの」と笑顔でよく言ってくれました。
お嬢さんが結婚する時には、いそがしい体で、一生懸命ドレスを縫いました。
すてきなブーケも生のお花で作ったと、写真を見せてくれました。
ファッションショーへはいつも、楽しそうに出場してくれました。
けれど数年後、突然病気を宣告されたと、・・。
そうして2~3年の闘病の後、彼女はあちらの世へ旅立ってしまいました。
それから又何年か過ぎたのですが、先日、Nさんの次女さんから突然電話を受けました。
「結婚することになったので、お姉ちゃんの着たウエディングドレスを着たいけれど、サイズ直しができますか?」ということでした。「どこをどんなふうに直したらいいか、一度着てみてください」と私が言って、Nさんのふたりのお嬢さんがやってきました。
着てみてもらうと、ぴたりとして、全く直すところはなかったのです。
「あとはアイロンをかければいいのでは?」と言ってから、若い娘がドレスのアイロンがけなんて大変だろうな、と思って、私がしてあげますとつい申し出ました。
そのドレスが、今ここにあります。大きな襟がケープのように肩をおおっている愛らしいデザインです。なつかしいです。
Nさんが、空の上から、ああよかったと、きっと喜んでこの娘たちを見守っていると思います。